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公開講演会「重力波~アインシュタインからの最後の宿題!」を開催

2018年10月28日

毎年、超一流の科学者を迎え、本学が開催する公開講演会。この講演会は広く外部に無料で開かれた、本学の地域貢献の一つとして知られています。大テーマは「21世紀の科学技術」。今年テーマは「重力波~アインシュタインからの最後の宿題!」。この分野では世界最前線で研究されるお二人を招き、1027日(土)に本学を会場として開催されました。オーディエンスには、高校生、地域の一般の方々、そして大学関係者まで様々な方々がいらっしゃり、講演者の温かい人柄もあって、様々な質問がなされました。

 

 

講演の概要

 

「重力波をとらえる ~日本の重力波望遠鏡KAGRA~」

東京大学宇宙線研究所 重力波観測研究施設長 大橋正健教授。

 

アインシュタインの一般相対論によれば、質量を持つ物体が存在すると時空にゆがみができます。さらにその物体が運動をすると、この時空のゆがみが光速で伝わります。これが重力波です。重力波はすべてを貫通し、減衰しないと考えられています。当研究所の重力波研究グループでは、重力波の直接検出を行い、それを将来の「重力波による天体観測」につなげていきたいと考えています。

 岐阜県飛騨市神岡町にある神岡鉱山地下深くには、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士の成果につながった宇宙素粒子研究施設カミオカンデの後継施設スーパーカミオカンデをはじめ、宇宙の謎に迫る世界最先端の研究施設が整備されています。いま、ここで新たな研究計画が動き出しました。それがKAGRA計画(大型低温重力波望遠鏡計画)です。

この「望遠鏡」によって、地底深くからとらえようとしているのは、光や電磁波ではなく、重力がもとになって生まれる宇宙からの波動「重力波」です。重力は、宇宙の構造や進化を支配するとても重要な力で、重力波を観測できるようになることは、宇宙の謎を知るために非常に重要です。一日も早く国際共同観測に参加したいと考えています。この計画は、ブラックホールの解明などをめざし、人類初となる「重力波の直接観測」に挑戦しています。

 

活発な質問の中から一つをピックアップ。

Q. 重力波を伝えている媒体は?

A. 重力波が伝わるにはエーテルのような媒体は必要ないことを、アインシュタインが証明している。空間自体が波となり伝わる。

 

  

 

「重力波源からの光をついに観測 ~日本の望遠鏡群が捉えた重元素の誕生現場~」

広島大学宇宙科学センター長 川端弘治教授。

 

広島大学、国立天文台、甲南大学、鹿児島大学、名古屋大学、東京大学などで構成される日本の重力波追跡観測チームJ-GEM(代表:国立天文台ハワイ観測所長・教授 吉田道利)は、2017817日にアメリカの重力波望遠鏡Advanced LIGOとヨーロッパの重力波望遠鏡Advanced Virgoによって検出された重力波源GW170817の観測を行い、重力波源の可視光・赤外線対応天体を捉えて、その明るさの時間変化を追跡することに成功しました。

2年前に人類が初めて重力波の直接観測に成功して以降、検出された4つ(ないし5つ)の重力波は、いずれもブラックホール同士の合体によるもので、可視光などの電磁波では捉えられませんでした。GW170817は、その重力波信号の特徴から、初めて、中性子星同士の合体である可能性が高いと予定され、「光る」ことが期待されていました。あいにくこの天体は南天に位置し、日本では夕方の薄明中に沈んでしまう状態でしたが、南アフリカやニュージーランド。ハワイに建設された日本の望遠鏡で、その天体を鮮明にとらえることができました。

観測された可視光・赤外線の特徴は、中性子星合体に伴う電磁波放射現象「キロノバ」で理論的にうまく説明されるものでした。本研究により、宇宙における金やプラチナといった貴金属元素が中性子星合体によって大量に合成される可能性が高いことが見いだされました。

さらに、広島大学が日本チームの代表を務めているガンマ線衛星「フェルミ」によっても、この重力波源からのガンマ線が、重力波の信号から約2秒遅れて捉えられました。

2017年のノーベル物理学賞を獲得したばかりの重力波の直接検出ですが、今回の一連の研究から、重力波が未知の宇宙への有力な観測手段であることが確実なものとなり、「重力波天文学」の本格的な幕開けが期待されます。

 

質問の中から一つをピックアップ。

Q.  重力波も干渉はあるのか?

A.  認められる。

大橋正健教授

大橋正健教授

川端弘治教授

川端弘治教授

チラシ

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