緑色の小さな電気自動車で登場したのは、まるで少年のような笑顔を見せる平子廉教授。自動車が大好きな平子教授が研究しているのは究極のエコカー。果たして、その秘密とは…!?
平子教授が研究している大きなテーマのひとつが「バイオディーゼル燃料」と呼ばれるものです。一般的に、私たちが普段乗っている自家用車にはガソリンエンジン、バスやトラックなどにはディーゼルエンジンが使われています。ガソリンエンジンの燃料はガソリンですが、ディーゼルエンジンの場合には軽油を燃料とします。この軽油の代替品となるのがバイオディーゼル燃料です。
バイオディーゼル燃料は天ぷら油やオリーブ油、菜種油などの植物油から生まれます。しかも基本的に使用するのは廃食油。つまり天ぷらを揚げた後の油など、いらない油を使って自動車を走らせたり、発電したりしようというのです。
廃食油はアルコールと合成することによってバイオディーゼル燃料に生まれ変わります。バイオディーゼル燃料の最も大きな特長は、CO2(二酸化炭素)の排出量にあります。ガソリンや軽油は化石燃料ですから、燃やせばCO2が出ます。それに比べてバイオディーゼル燃料の原料は植物。植物は成長過程で大気中のCO2を吸収するため、その植物から作られた燃料を燃やしても、CO2排出量は差し引きゼロになるのです。
実はこうしたバイオディーゼル燃料を研究している研究者は数多くいます。しかし平子教授の研究はひと味ちがいます。一般的にバイオディーゼル燃料は廃食油とアルコールランプの燃料にも使われるメタノールという物質から生まれます。しかし工業由来のメタノールでは、充分にCO2を削減することができません。そこで平子教授は同じアルコールでも植物由来のエタノールを使って、バイオディーゼル燃料を作ろうと研究しています。植物由来の廃食油と植物由来のエタノールを使えば、完全なバイオディーゼル燃料が誕生するというわけです。
平子教授が研究しているもうひとつの大きなテーマが「バイオメタン(バイオガス)」です。バイオメタンとは動物の糞尿や下水などから生成されるもので、平子教授はこのバイオメタンをディーゼルエンジンの燃料として使えるようにするための研究も進めています。
バイオディーゼル燃料もバイオメタンも地球温暖化対策としては希望が持てる燃料です。しかしコスト面の他に、この夢の燃料が果たして既存のエンジンで使えるのか……という大きな課題があります。自動車メーカーが現在想定している燃料はガソリンや軽油のみ。エンジンはそれ以外のものに対応できるようにはまだなっていません。平子教授は夢の燃料を既存のエンジンで利用できるようにするためにはどうしたらいいのか、日々研究を続けています。