幼い頃から乗り物やプラモデルを組み立てるのが大好きだったという平子教授。お父様も大学でエンジンの研究をされていたそうで、その背中を見て育ったといいます。
平子教授は大学卒業後、大手の自動車会社に就職。2010年まで現場の最先端でエンジンの開発に携わってきました。教授は若き日をこう振り返ります。「私が大学を卒業して自動車会社に入社したのは、ちょうど排気ガス規制がスタートした頃でした。それまでの技術者たちは排気ガスのことなんか全く考えておらず、丈夫で性能のいい自動車をつくることだけに一生懸命でした。ですから排気ガス規制を突き付けられたとき、全世界の自動車会社と石油会社は一体となって研究を始めたのです。私もそんな時代の中でエンジン開発に関わってきました。そうして研究を続けた結果、排気ガスを低減する技術は確立しました。しかし次は燃費と性能を上げなければなりません。そして燃費と性能が上がれば、さらに排気ガス低減を追求する。そうした終わりのない繰り返しの中で今のような自動車は生まれたのです」。
地球環境にやさしい自動車をつくることに人生を捧げてきた平子教授は、第二の人生の舞台に大学を選びました。「大学なら自動車会社ではできなかったことができます。一企業人としてではなく、自由な立場でまだ自動車会社も着目していないバイオディーゼル燃料の研究をする。そうすることでCO2を削減し、地球環境を良くしていきたいと考えています。他人がやっていないことをやるというのが、研究の最大の魅力ですよ」。
そんな平子教授の授業は人気が高く、中でも3年生で行われるマイクロカーを分解、組み立てする実習は学生に大好評です。研究室は自動車工場さながら。様々な機械や装置が設置してあり、まさに「ものづくりの現場」といった感じです。「実習ではまずこれから分解する自動車がきちんと動くかどうかを確認するために全員が試乗します。それから4ヶ月をかけてエンジンの中まで、ぜんぶ自動車をバラバラに分解して、また組み立てます。そして今度はそれが分解前と同じように動くかを試乗して確認します。こうした実習では自動車の構造を徹底的に体感することができます。大学でここまでやっているところはないと思いますよ」。
実習では最新のエンジンを学ぶためにバイクの分解、組み立ても行います。マイクロカーやバイク、電気自動車などそれぞれのエンジンや構造の違いを知る実習はメカ好きの学生たちを魅了しています。
平子教授は研究者にとって必要なことを「諦めないこと」だと話します。くじけそうになる時はしょっちゅう。それでも「自分で考えられるすべてをやるしかない」。夢の燃料が夢ではなくなる日もそう遠くはないかもしれません。