ガンダムをつくりたい—それが佐藤雅紀先生の幼い頃の夢でした。胸にその夢を持ち続けた先生がロボット開発への道を歩みはじめたのは、大学生の頃だったと言います。それ以来、佐藤先生はロボットと向き合う日々を送っています。
現在、佐藤先生が研究している大きなテーマのひとつが「水中で動くロボット」です。人間が容易に行くことができない水中は、ロボットの働きが求められる場所であり、災害時にはさらに活躍の幅を広げます。
もともと陸上で動くロボットを研究していた佐藤先生は、水中で動くロボットの研究がこんなにも大変だとは思わなかったと話します。「もしロボットが暴走しても陸上ならすぐに止めに行くことができますが、水中の場合はそうはいきません。ひとつひとつの作業を丁寧に行う必要がある上に、実験には時間もかかります。また水中ロボットは中に水が入らないように密閉しているため、バッテリーを交換するだけでも一苦労なんですよ」。
それでも先生が水中ロボットにこだわるのはそれが今、求められているからです。東日本大震災以降、再生可能エネルギーが注目されていますが、長崎県の離島でも大規模な浮体式洋上風力発電に取り組んでいます。浮体式洋上風力発電とは海に浮く風力発電のこと。洋上は風が強くて変動が少ないため、安定的な発電が見込まれるのです。佐藤先生はこう話します。「海上に浮く風力発電の場合、それを係留するチェーンがあります。例えば、それが100台あったとして、台風の後などはそれらが正常に作動しているかを早急に、しかも100台同時に調べる必要があります。こうした場合にロボットが迅速にチェーンのある場所まで行き、検査をして戻ってくることができればいいですよね。こんなふうに人間には危険であったり難しいことも、ロボットなら可能にしてくれます」。
佐藤先生が研究しているもうひとつのテーマが「トマトを収穫するロボット」です。人間にとってトマトを収穫するのはとても簡単なことですが、ロボットではそうはいきません。「まずトマトをトマトだと認識することから始まります。ロボットには鈴なりになっているトマトの房が1つのトマトに見えてしまったり、赤いトマトは光の当たり方によって赤い部分と白い部分ができるため、ロボットには三日月の形に見えてしまったり…と、トマトをトマトだと認識させるだけでも難しいのです。まだまだ研究は始まったばかりですね」。このロボットが完成したら、人手不足の農家を救う大きな希望になりそうです。
水中ロボットもトマト収穫ロボットも、佐藤先生の研究の根底には「人の役に立つ賢いロボットをつくりたい」という熱い想いがありました。