ロボットを100パーセント動かすのは難しいことです。テレビなどでも操縦者が「あれ?今日は動かないな? さっきまで動いていたのに…」と困っている場面を見ることがあります。佐藤先生は「ロボットは動かしたいと思ったときに100パーセント動かなければなりません。でも数字上、それは不可能です。だから僕は10回動かしたら1回メンテナンスをして、また10回動かす。それを繰り返すことで100パーセント動くロボットを実現したいと考えています」と話します。
佐藤先生はロボット愛へ満ちていながらも、すべてをロボットに託してはいけないとも言います。「現在、介護ロボットが注目されていますが、私は将来、自分が年をとった時にはロボットではなく、人に介護してほしいと望んでいます。介護においては、人と人がふれあうことが重要です。だから介護ができるロボットをつくるより、介護する人をサポートするロボットをつくる方がいいのではないか、そんなふうに思うんです」。
これまで真水で動くロボットを研究してきた佐藤先生ですが、昨年から海水でも動くロボットの研究に取り組み始めました。海水は真水よりも一段と難しい技術が必要になると言います。「携帯電話を濡らしても電源を入れずに乾かしておけばまた復活しますが、海水ではそうはいきません。それと同じです」。先生が目指すのは、船のメンテナンスができるロボット。造船業が盛んな長崎にとって、この研究は大きな一歩になりそうです。
佐藤先生はロボコンの強豪校としてしられる「NiAS夢工房」の顧問も務めています。「NiAS夢工房」には学科の壁を越えてロボコンに挑戦したい学生たちが集まっています。先生はロボコンに出場する魅力をこう話します。「ひとつはモノをつくって、上手く動いたという成功体験を得られること。それに大勢のメンバーが仕事を分担し、協力して作業を進めるので楽しいですよね。また他大学に刺激を受けたり、交流ができたりと仲間の輪も広がります」。さらには「就職後も必ず役に立つだろうなと思うんです」と佐藤先生。「NiAS夢工房には、成績が悪いと活動を続けられないというルールがあります。だから学生たちは皆、勉強を教え合っていますよ。その上でロボコンに挑戦しますから、学科の勉強にプラスして幅広い知識を得ることができます。ここは1年生から4年生までが揃った研究室のような雰囲気。コミュニケーション能力も向上するし、モノが動かない時にどうしにかしようと解決する力も身につく。そして何よりへこたれません。学生たちの姿を見ていると、社会に出てから必要なことがここで学べていると実感します」。
佐藤先生は水中ロボットの研究を始めたきっかけを「尊敬する先生方がとても楽しそうに研究をされていたから」と言います。ロボット研究は先生にとって、まさに楽しみに他なりません。「やっぱり夢はガンダムをつくることかなぁ」と笑う先生の笑顔が印象的でした。