下島教授はコンピューターの組込みシステムの研究を軸に、長崎独自の共同研究も行っています。その1つが医療現場での医工連携プロジェクトです。長崎県は医師の数は多いのですが、長崎市内に集中していて、五島をはじめとする離島では医師不足が深刻な問題となっています。五島では医師の代わりに看護師が巡回をしていますが、看護師では治療ができない上に、指導を仰ぐ医師がなかなかつかまらないという現状があります。そうしたことから看護師の精神的負担は大きくなるばかりなのです。
 そこで私たちが考えたのは無線を使って、看護師から医師へリアルタイムで情報を送ろうというものです。体温などの数値で示せるものはいいのですが、例えば顔色が悪いとか、腫れがひどいとかになると、電話では的確な情報は伝わりづらいですよね。それらの情報をインターネット上にのせて、データとして医師に渡すことができれば、正確な情報を伝えることができます」。
 下島教授は「大切なのは、たくさんある情報の中から、使える情報を選びぬき、いかに意味のあるものにしていくかということ」だと言います。こうした考えのもと下島教授は、医療現場だけでなく、造船会社との共同研究に取り組むなど、長崎に貢献する研究を進めています。
 組込み技術の教育促進の一環として、下島教授はETロボコンチームの顧問も務めています。ETロボコンとは、日本の産業競争に欠くことのできない重要な「組込みシステム」分野における技術教育をテーマに、決められた走行体で指定コースを自律走行する競技のこと。本学のETロボコンチーム「NiASET」は、昨年開催された「ETロボコン2015チャンピオンシップ大会」のデベロッパー部門アドバンストクラス(上級者部門)の「競技部門」で見事、優勝し、日本一に輝きました。大会は企業や一般のチームも含めた中で行われましたが、「NiASET」は初めての学生チャンピオンという快挙を成し遂げました。下島教授は「学生にはこれまでに先輩たちが作ったもの、昔の上位入賞者の作品をよく研究するように伝えました。それを素直に受け入れて取り組んだ結果が優勝に結び付いたと思います」と話します。下島教授の好きな言葉「好きこそ物の上手なれ」がカタチになり、またひとつ本学の新たな歴史を作りました。 
 本学にはもう一人、「素粒子実験物理学」の分野で活躍する研究者がいます。大山健教授です。大山教授はALICE実験という、LHC加速器を使った別のグループの実験に参加していて、ALICE検出器のための測定装置の研究開発を行っています。
 このALICE実験では、宇宙誕生の瞬間に近い状態を実験室レベルでの再現に成功しました。今後、この研究が進めば、未知の素粒子や物理現象が発見されるかもしれません。しかしながら、この実験では膨大なデータを大変な時間とコストをかけて処理しなければなりません。大山教授は従来とは異なるデータ処理の方法やシステムを研究し、素粒子物理学の研究を更に進化させようと挑戦を続けています。
 「物理はもちろん、海外の研究者たちと意見交換するためには英語を学ぶことも大切ですよ」と、学生たちにエールを送る大山教授。世界を舞台に活躍する研究者ならではのアドバイスです。