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平戸沖の漁船転覆事故:原因究明のための取材に船舶工学科も対応しました

 4月14日(火)長崎県平戸市沖でまき網漁船「第11大栄丸」が転覆・沈没。12人が行方不明になった事故の原因究明に関して、本学にも各メディアから専門家の意見を取材したいとの依頼があった。長崎総合科学大学は、旧長崎造船大学として、現在でも工学部に日本唯一の船舶工学科があり、船舶工学、海洋工学等の専門分野に詳しい教授陣が揃っている。

 本学では、このような悲惨な事故が二度と起こらぬようにとの願いと地域における大学の使命として、可能な限り協力した。

 今回の転覆・沈没事故については、船舶の復原性や転覆について長年の研究実績がある慎 燦益教授(専攻分野:船舶工学、海洋工学)が、各メディアの取材に応じ、4月18日(土)のNBC(長崎放送)では、事故に関する緊急企画に専門家として生出演。今回のような転覆・沈没事故では、生存者の事故現場の海象や転覆・沈没の状況についての証言を重視し、検証することが重要であると指摘した。その上で、生存者が船室から出るまでに船の傾斜がしばらくの間続いたこと、船尾の右舷後方から大きな波を受け網置き場に海水が打ち込んだこと、船が操縦不能になったことなどの証言を重視していると強調した。一方、このような証言から、短時間で転覆する三角波やブローチング現象などの要因のみで片付けるのではなく、転覆までしばらく傾斜していたことに着目すれば、右舷後方から操縦不能になるような高波で網置き場に海水が打ち込んだことにより、積んである網の挙動と重心移動が復原性を劣化させ転覆に至った可能性を示唆した。また、このような事故を未然に防ぐためには、転覆の原因を早急に究明すると共に、研究者、行政機関、造船所、水産業者および漁船の乗組員が網の挙動による重心移動と復原性との関係について共通認識をもって対処することが必要であると指摘した。

□日本唯一の船舶工学科 http://www.ship.nias.ac.jp/

慎 燦益教授

慎 燦益教授