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加藤貴本学大学院新技術創成研究所准教授の研究「高温超伝導実現に向けた超伝導理論の研究」が、日本経済新聞(2011年1月14日)、日本経済新聞朝刊(2010年11月22日 )、日経産業新聞(2010年11月18日)に掲載される

 昨年後半より、新聞記事等で話題となり、注目されている「有機超電導物質の電子構造」に関して、今回、本学の加藤貴准教授の理論研究と岡山大学の実験研究グループ(久保園芳博教授、神戸高志准教授、横谷尚睦教授)との共同研究の成果が日本経済新聞(2011年1月14日)、日本経済新聞朝刊(2010年11月22日付)や日経産業新聞(2010年11月18日付)に掲載された。

 本学の加藤貴准教授は2000年頃から、高温超伝導実現を目指した分子性超伝導における理論研究を行ってきており、その中で、2002年に超伝導発現を理論予測していた物質(picene)が、実際に超伝導性を発現することが、8年後の2010年3月に岡山大学の実験研究グループによって発見された。
 超伝導発現の可能性を、実験検証の前に理論予測することは大変困難であり、このような理論予測をできた研究は世界中をみてもほとんど前例がない。
 さらには、加藤准教授は、piceneより分子サイズが小さなchryseneやphenanthreneといった分子では理想的な電子状態によってはさらに高温で超伝導を起こす可能性があることを2002年に提唱している。
 加藤准教授のこの理論予測と岡山大学の実験研究に関し、「実際に合成できれば、長足の進歩だ。ノーベル賞級の成果に発展する可能性も秘めている。」と日本経済新聞朝刊(2010年11月22日付)で紹介された。

 特に、加藤准教授が2002年にアメリカ物理学会誌に発表した論文(J. Chem. Phys. 116 (2002) 3420)の中で、ベンゼン環がジグザグに5個つながった分子であるpiceneのアニオンの結晶が10 K程度で、さらには、分子サイズがより小さなchrysene(ベンゼン環がジグザグに4個つながった分子)やphenanthrene (ベンゼン環がジグザグに3個つながった分子)においては、理想的なアニオンの電子状態ではそれぞれ15~50 K、50~100 Kで超伝導状態になる可能性があることを理論的に予測していた。
 8年後の2010年に岡山大学の実験研究グループによりpiceneのアニオンの結晶で7及び18 Kでの超伝導性が発見された。
 このことをきっかけに、理論研究を行なう加藤准教授は、現在、岡山大学の実験グループと、高温超伝導実現を目指し、共同研究を行なっている。
今後さらなる実験技術の進歩によりpicene以外にも以前不可能と考えられていた物質の超伝導性発現が幅広く期待される。
 このような背景により、実験での発見に先駆けて、超伝導性を予測してその電子物性を考察するという理論先行型研究手法は大変有効であると考え、加藤准教授は理論研究を進めている。

□長崎総合科学大学大学院新技術創成研究所
http://www.nias.jp/center/ri4/index.html

加藤貴准教授

加藤貴准教授