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長崎総合科学大学第2回公開講演会『住まいを創る―その意味を考える』を開催(10/28)

 長崎総合科学大学第2回公開講演会『住まいを創る―その意味を考える』が10月28日(金)、長崎県美術館にて、一般来場者、学生、教職員の参加で開催された。
 建築学科主任の伴丈教授が挨拶した後、「建築家 竹原義二の仕事」と題して、建築家であり大阪市立大学教授でもある竹原義二氏が講演した。

 冒頭竹原氏は、今回長崎に来て、ずっと見たかった白井晟一氏が造った建築・佐世保市内の「親和銀行」を見ることが出来たと胸中を話し、「30数年前に見た建築が未だにあり、その建築を見てきて、この仕事をしていて良かったという気持ちが今日また一段と深まった」と続けた。
 今年3月に起きた東日本大震災にも触れ、「震災で街一つが一瞬にして消えてしまった。しかし人間はまたもう一度そこに復活出来る力を持っている。それが建築なんだと思う。」と話した。

 竹原氏は、最近ずっと考えているという「素の建築」のテーマで、伊勢神宮や如庵、民家などを例に出し解説。
 伊勢神宮は、白木そのままの木を削り込み、差し金という道具を使って形を整え造っていく「白木造り」であり、「この白木造りが、私たちが思っている一番最初のそのままのもの(建築)じゃないかと思う」と紹介。また、「砂利道を歩く時の『ザッザッ』という音を聞きながら振り返ると、私たちの五感を研ぎ澄ましていくものが一つ一つの建築の中に隠されていて、それを見に訪ねて行き、そういうことを考えていくと、私たちの祖先はどんなものを作ってきたのかが分かってくる」と話した。
 如庵(じょあん)は、犬山城にある織田信長の弟が作った茶室で、「非常に簡素に造られているが、よく見ると研ぎ澄まされたものがあり、彩りを持った建築である」と解説。竹が打たれた茶室の窓などに関しても、分析していきながらどんな材料をどういう形で材料の個性を活かして使われているのかを、大学で勉強していると紹介した。
 民家は、昔あまり評価されなかったが、力強さがあり、荒々さと繊細さを兼ね備えた建築であると紹介。住居に明かりが差してこなかった時代や電気がなかった時代は、床を鏡のように映り込むほど磨き、屋内に跳ね返った光を利用していたことも紹介した。

 また、最近の建築は周りがどんどん変わってしまって見るも無残であると話し、自然の中で磨き込まれていき、時間が経てば経つほど美しくなっていく建築があるとも紹介した。
 竹原氏は、師匠であった石井修氏についても触れ、「建築はゆっくり創りなさい」などといった教えや、大学時代の先生からは「建築というのは人と人とのつながりの中で考えていく」と教えられたことも紹介した。
 建築を見る時のアドバイスとして、「建築を見に行くたびに考えることや発見があり、寸法や使われている材料を見極め、今まで見えてこなかったもの、今まで考えられなかったものを感じ、ただの感動ではなくて、造られたその時の精神や、作られた職人さんがどのように造り込んでいったかを考える」と話した。
 また、建築を造る時のアドバイスとして、その場所に元々あったかのように周りに馴染んだ建築を造ることや、木・石・土が持つ良さを活かした建築を造ること、手間隙をかけながら建築を愛していくことを説明した。
 古い日本家屋を愛するということについては、古い建築は汚いと思われてしまい、新しい建築が綺麗だと思われている現代だが、古い建築には深みがあり美しく、味わいがあることを解説し、愛する建築に出会えているかと会場に投げかけた。

 講演後は、本学人間環境学科のブライアン・バークガフニ教授も交え、ディスカッションが行われた。バークガフニ教授も古い日本家屋の大切さなどに触れ、人との出会いや縁・繋がりが住まいにも繋がっていると話した。また、竹原氏は図面を手書きで書くことにこだわりがあることや、建築を見ていつ頃造られたものでどのように造られたのかを考え、見る目を養うことの大切さも説明した。


●長崎総合科学大学 第2回公開講演会
『住まいを創る―その意味を考える』

◇講演
 「建築家 竹原義二の仕事」
  建築家・大阪市立大学教授 竹原 義二 氏
◇ディスカッション
  (進行)本学建築学科准教授 山田 由香里
    竹原 義二 氏
    本学人間環境学科教授 ブライアン・バークガフニ


◇公開講演会
http://nias.jp/public/

◇環境・建築学部建築学科
http://www.arch.nias.ac.jp/main/top.html

◇大阪市立大学
http://www.osaka-cu.ac.jp/

講演する竹原氏

講演する竹原氏

ディスカッション

ディスカッション

会場の様子

会場の様子