令和元年度 長崎県科学技術大賞表彰において、山邊時雄 特命教授(元学長)が、『新規なナノ炭素質半導体のリチウムイオン電池・キャパシタへの応用』の業績が認められ、「長崎県科学技術大賞」を受賞しました。
受賞対象となった研究内容
2019年度ノーベル化学賞は「リチウムイオン電池の発明」でした。山邊時雄教授はリチウムイオン電池の実用化を下支えする、負極材料に関する基礎研究を世界に先駆けて行い、成果は世界的に高く評価されて1997年に『日本化学会賞』※1を受賞しています。
具体的には、実用化初期の(例えば、初めて商品化された)リチウムイオン電池の負極は、山邊教授と共同研究者の故 矢田静邦氏とで、発見・開発した『PAS(新発見のポリアセン系炭素材料)の一種』と評価されており※2、山邊教授は、負極材の理論的予測と、当時困難とされた炭素材での電気化学的に安定し安全な動作原理を発見して、軽くて繰返し使える2次電池の実現に大きく寄与しました。最近の成果としては、その発展型であるPAHs(多縮合環芳香族炭化水素)等の発想、実験・実証が挙げられます。
また電池と類似した蓄電デバイスであるリチウムイオンキャパシタの負極には、現在も『PAS』が世界中で広く用いられています。
長崎県への貢献
2001年、京都大学から長崎総合科学大学学長として長崎に赴任。
直ちに、『新技術創成研究所』を立ち上げ、文部科学省を初めとする、先端的研究、産学官連携のプロジェクトを次々と受託。自らも研究を続け、『新技術創成研究所』を先端研究の新しい拠点へと成長させました。 また、『新技術創成研究所』は、研究者向けのシンポジウムだけでなく、国内外の一流の研究者などを招き、『21世紀の科学技術』と銘打った、世界最先端の科学技術を学べる公開講演会を毎年開催して、研究者のみならず地元の産学官連携関係者や、高校生にいたるまで広く親しまれています。
また、山邊特任教授は『確かな産業を興す為の基礎科学の重要性』を強く説き、長らく『長崎県科学・産業技術推進機構』の理事長として、県内多くの企業経営者と共に、長崎県の科学・産業技術向上に尽力。さらには産学官連携事業である「東長崎エコタウン構想」の主宰者として東長崎地区の活性化に努めました。
出典
※1 化学と工業、第50巻、第3号 (1997)、p.257
※2 P. Novák, K. Müller, K. S. V. Santhanam, O. Haas, “Electrochemically Active Polymers for Rechargeable Batteries,”Chem. Rev., 97, 217-272 (1997).
関連HP
山邊時雄 随想「基礎科学の創造性と役割」
http://www.mech.nias.ac.jp/biomass/topics0305.html
山邊時雄 ー 長崎総合科学大学 研究者紹介
/teachers/detail.php?id=1101
新技術創成研究所 HP
https://www.iist.nias.ac.jp/
長崎県科学技術賞大賞 プレスリリース
http://www.pref.nagasaki.jp/press-contents/432128/