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奥村教授の研究課題が採択(8/23)

8月23日、独立行政法人科学技術振興機構(JST)が地域イノベーション創出総合支援事業として、シーズ発掘試験における平成18年度採択課題が選定され、本学工学部電気電子情報工学科 奥村典男教授の研究課題「固体高分子型燃料電池の触媒使用量大幅低減に関する研究」が採択された。
この事業は、各府省・大学・地方自治体・独立行政法人・TLO等に配置されている各種コーディネータ等が発掘した大学などの研究シーズを育成するとともに、実用化に向けたコーディネート活動を支援することを目的とした試験研究制度で、全国から5,621件の応募があり、その中より応募課題の新規性、独創性、実用化の可能性および研究計画の妥当性を技術的評価を行い、1,008件が採択された。長崎県は本学の他、長崎大学、佐世保高専などの研究機関で7件が採択されている。

採択された研究内容について奥村教授にうかがいました。次の通りです。

◎どのような研究か?
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 水に電気を加えると(「電気分解」という)水素と酸素とができます。逆に水素と酸素とをひっつければ(「化学結合」という水と電気とができます。これを利用して電気を発生する装置を「燃料電池」と言います。
 このことは昔からわかっていましたが、科学の進歩によりやっと最近、比較的効率よく電気を発生することができるようになってきたことと、地球環境の問題や石油枯渇の問題が後押ししてくれたお陰で、地球環境に優しい「燃料電池」が話題になるようになってきました。
 しかし水素と酸素さえあれば簡単に電気が発生するかと言えばそうはゆかず、そこには様々な「しかけ」が必要です。例えば「電気を発生する」ためには「電子の流れ」をつくってやらなければなりませんが、そのためには水素から電子を引き剥がさなければならないのです。そのために使われるのが「白金」という高価な金属で、「燃料電池自動車」や「家庭用燃料電池」には大量の白金が必要なため、なかなか実用化しないのです。 今回、私たちがJSTから研究費をいただくことになった研究は、この高価な白金の使用量を大幅に減らそうというものです。わかりやすく道路に例えて言えば、舗装道路にはアスファルトが隙間なく塗られていますが、私たちの研究はアスファルトを「水玉模様」に塗ってアスファルトの使用量を減らそうというものです。燃料電池ではこのアスファルトが「白金」に相当すると思ってください。
 実際の道路ではアスファルトを水玉模様に塗ったのでは、車は通れないのでお話になりませんが、燃料電池では白金を水玉模様に塗った方が電池としては性能が良いということが私たちの研究でわかったのです。今後はどのような水玉模様が良いのか? なぜ水玉模様が良いのか? などについて研究したいと思っています。

◎どのような効果があるのか?
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 先に述べたことからわかるように、私たちの研究で燃料電池を安く作ることができるようになるというのが最大の効果です。
 燃料電池が高い理由はいくつもありますが、その多くは大量生産すれば安くなります。しかし、白金は埋蔵量が少ない鉱石から採取しなければならないため、大量に使えば使うほど高くなるのです。「燃料電池自動車が実用化するか否かは、白金の使用量をどこまで減らせるかにかかっている」と言われる理由がここにあります。

◎採択された感想を
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 非常に重要な研究だと思っていますので、うれしさ半分、「やらなきゃならない」という緊張半分というところです。